ダメマシンクリニック80【エアコンのリモコン:複合性誤誘導および表示失調】 ― 2018年04月23日 18:00
みなさま
こんばんは!
昨日の晴れた日曜日、Tシャツで自転車に乗り、気分はすっかり夏でした。気持ちよく汗をかいて戻ると、部屋が少し蒸して感じられました。
「さて、今年初のエアコンを」とリモコンを手に取ったところから、今日のダメマシンクリニックが始まります。
ダメマシンクリニック80【エアコンのリモコン】
エアコンをつけようとしたかみさんいわく「電池変えたんだけどどのボタン押しても動かないの。リモコン壊れたみたい。」と。久しぶりなので電池切れしており、それを交換したところ壊れていたのを見つけたそうです。
その時のリモコンは時刻の設定を促す画面のまま固まっていました。
この状態で画面が固定されていて、点滅などの動的な表現はありません。
画面すぐ下の十時キー周辺だけではなく、ここに見えているどのボタンを押しても反応がありません。
画面をよく見ますと「変更【△▽】→【確定】」と書かれています。
やはり十字キー(△▽)の操作で良さそうですが、どこを何度押しても反応はありません。「運転/停止キー」を押してもエアコンはつきません。
ここまで触ってみますと「表示の通りに操作しても動かない。どこを触っても反応がない。壊れた。」と思うのはごく自然なことのように思います。
しかし、下部のカバーを開けたところにあるタイマー設定キーを触ると反応しました。正解はカバーの下だったのですね。ここで時刻を設定したあとは通常通りに使えました。故障ではなかった、ということですねぇ。先ほどの画面表示を見返しますと、「△▽」「確定」がこのキーをさしていたことがわかります。わかりますけど、、ふむ。
ここでリモコンを俯瞰して見ますと、大きく上下に別れたレイアウトになっています。
上の範囲は「画面/十時・決定キー/運転・停止キー」となっており、いずれも大きく押しやすい位置(手に持った時に親指が届く範囲)にレイアウトされていますので、ここが「主な操作を行う」範囲と受け取れます。
対して下の範囲は「温度/風量/お知らせ/冷房/暖房/除湿/送風」と機能を直接操作できるキーが連なっており、ここは「操作を細かく行う」範囲と受け取れます。
この「大きい基本操作パネル」と「小さくてショートカットキーが並んだ操作パネル」の対比は、「上の範囲を触っていれば行いたいことが出来、操作に詳しければ下の範囲でさらに使いこなせる」という印象を持たせます。
これらのことから、ほとんどの人が最初に十時キーを触る(可能性1)、つまり操作を間違えると言って差し支えないでしょう。
その後は人によって、、
可能性2:他のボタンを触る →動かない
可能性3:画面をよく見る(熟読する) →十時キーを触る →動かない
可能性4:カバーを開ける →タイマー設定キーを触る →動く
などの可能性を試すでしょう。
もちろん、すぐカバーを開ける勘のよい方もおられると思いますけれど、可能性を3つ試しても動かない場合、諦めてしまう方も少なくないのではないでしょうか?
【診断】
いま見てきましたように、誤誘導してしまう状況が重なっています。整理しますと、、
1)配置性の誤誘導:キーレイアウトから十字キーを触らせる
2)表示性の誤誘導:文字表記が十字キーを触らせる
3)遷移性の誤誘導:時刻を確定しないと操作不可能な設定が判断を誤らせる
従いまして、配置性、表示性、遷移性の3つが重なる「複合性誤誘導」と診断します。
また、画面内の表記が意図と反していますので「表示失調」を併記します。
【処方】
では、処方です。
今回は応急処置ではなく、メーカーによる操作設計と表示の改善を処方します。
処方01:操作設計変更
操作設計を以下の様に見直します。
・時刻を設定しなくても動作するようにする。
・十時キーでも時刻が設定できるようにする。
まず、「用意すべきハードが揃ったら動作する」(ここでは時刻を設定しなくても使える)ことがとても大切です。エアコンのスイッチが入ったあとでも時刻設定は充分間に合います。
むしろ、快適な状況でゆっくり設定してもらう方がストレス無く使って頂けるでしょう。
設定を促すことと強制することを明確にわけて考え、普段使いでは「設定を促す」に留め、時刻を設定しないと使えないタイマー機能などの時に、時刻設定画面に誘導して設定できるようにすると良いでしょう。
その上で画面との相性が良い十時キーを活用します。現在の十字キーは風向の設定のみに用いられていますが、画面に表示されている内容は全て操作できるようにします。
ここではもともとのキー操作は変更せず、十時キー「でも」使える、ということが望ましいです。リモコン下部の「ショートカットキー」と「十時キー」で機能の振り分けをしないほうが誤操作する可能性が減るからですね。
しかし操作設計の変更には一定の時間がかかるでしょう。
そこで、それまでの応急処置を処方しておきます。
処方02:表示追加
誤操作時の表示を以下の様にします。
・正しいキー操作を促す誘導を表示する。
・誘導はイラストを併記して視覚的にわかりやすくする。
今回のポイント、キーがカバーの下にあることを図示します。
誤操作をした際は、操作に対するリアクションがあることと、それが次の操作のヒントになっていることが大切です。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 80
対象:エアコンのリモコン
設置場所:横浜 一般家庭
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2018.4.23
症例:複合性誤誘導および表示失調
ダメ度:××(応急処置不可)
メーカーによる応急処置:表示追加
メーカーによる治療:操作設計変更(外科)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック79【区役所のエレベーター:表示不適応症】 ― 2017年11月28日 11:28
みなさまこんにちは!
気がつけば二月もご無沙汰してしまいました。私の10月はあっと言う間に過ぎまして、気がつけば11月も終盤。焚き火が恋しくてうずうずとしております。
さて、今週のダメマシンクリニックは横浜市の西区役所に設置されたエレベーターです。
ダメマシンクリニック79【区役所のエレベーター】
車椅子や子供でも手が届く位置にある堅牢な印象のこれは、古め(築30年超)の公共施設では時おり見かけるタイプの操作盤です。長く使用に耐えてきたと拝しますが、ダメ出しされていますね。
詳しく見てみますと、、
1:不明
2:ひらく(表示)
3:とじる(表示)
1はおそらく、「呼び出し」等の表示が消えたものと推察します。使用頻度が低く、ボタン右側の説明書が表示を兼ねるため更新されなかった、ということでしょうか。
2・3の「ひらく/とじる」は、ピクトグラムではわからないと言う方に配慮してのことでしょう。
このボタンに描かれたピクトグラムは、広く普及しているものです。マンションなどにお住まいの方でしたら意味がわからないと言うことはないでしょう。
ここは、高齢化率が高い木造密集地域を含む区の役所ですので、エレベーターに馴染みの薄い方に配慮したといえるでしょう。
もちろん、馴染みか薄いと言いましても程度の問題で、全く意味が通じないのではなく、とっさの操作時に「どちらを押したら良いのか」が判りにくい、ということですね。
【診断】
一般的なエレベーターでは機能している表示(ピクトグラム)が、ここでは不足となってしまうことから「表示不適応症」と診断します。
【処方】
では、処方です。
利用者に必要な情報を表示することを計画します。
処方01:応急処置(追加表示)
処方01:応急処置(追加表示)
既に適切な処置が為されていますのでこのままでも問題ありません。
ここでは、今後の地域の傾向を取り込んで外国語表記の追加をご紹介します。
統計によりますと、当該区は中国人、韓国人が多く、以下ネパール人(市全体ではフィリピン人)、ベトナム人、フィリピン人と続きます。
そこで、漢字(日中台に通ずる日本の漢字)とハングルと英語を追記します。
英語は学んでいる国が多いことからですが、実は「ひらがな表記」が大切です。
英語圏以外の方は「アルファベット」よりむしろ「ひらがな」を学んで来日されるからですね。(この点からも、現表示が適切で問題ないと言えるのですね。)
ところで、この「ひらく/とじるボタンのどちらを押したら良いのか」という迷いは、いつでも誰でも普遍的に感じている事がわかっています。「押す」という行為が「扉が開く/閉まる」という真逆の変化を起こすからですね。
例えば、飛行機のコクピットにずらっと並ぶ押しボタンを想像してください。ひとつひとつはシンプルな行為(押す)であっても、使いこなすには長い時間の訓練が必要です。実は「押しボタン」は、案外難しい(習得が必要な)操作なのですね。
(押しボタンについてはこちらでも考察しています。)
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 79
対象:区役所のエレベーター
設置場所:横浜市 西区役所
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.11.28
症例:表示不適応症
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:表示追加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック78【多目的トイレの自動ドア:自動過多】 ― 2017年09月30日 10:38
みなさま こんにちは!
今週の横浜は金木犀が薫りはじめ、赤レンガではオクトーバーフェストの小屋も建って、すっかり秋めいてきました。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、みなとみらいのショッピングモールに設置された多目的トイレの自動ドアです。
ダメマシンクリニック78【多目的トイレの自動ドア】
こちらは2013年夏に新設されて以来とてもきれいに運用されていますが、トイレにはこの様なダメ出しが。
詳しく見てみますと、、
1:注意書(扉を開放したまま退出)
2:告知(禁煙)
3:表示(緊急連絡先)
禁煙と連絡先はさておきまして、「扉を開放したまま退出」とはどういうことでしょう?
退室時に扉を閉めるのは普通のこと、むしろ良いマナーであると思います。場所によっては「扉は必ず閉めてください。」という張り紙も見かけます。それをわざわざ「閉めるな」と書かれていることには、何か理由があるはずですね。
よく見ますと張り紙の下段には、、
「内側の『閉』ボタンを押して退室されると外側から開かなくなり、次の方のご利用ができなくなります。」
とあります。扉を内側から閉めると鍵がかかる仕組みなのですね。
エレベーターで「閉」ボタンを押して出られる方を見かけますが、同じような感覚でボタンを押して退室される方がおられるのでしょう。しかしそれをしてしまうと外から開かなくなる。。
普段からドアはきちんと閉められる方がトラブルの元とは、、なんとも残念ですね。
ここでボタンの周囲を見てみますと、ボタンは「開/閉」という表記になっていて、「施錠中」という表示はありますが、鍵がどこでかかるかは明示されていません。
その補間のためでしょう、ボタンの上に「施錠してください」という注意書が添えられています。
これらを全て丁寧に読めば、「ドアを閉めると鍵がかかる」ということが理解できます。
なお、細かい話になりすが「鍵」は開け閉めするためのもの(キー)、「錠」は固定する本体(ロック)です。こちらの場合は鍵は介在せず、内側から扉を閉じると自動的に錠が閉じる設定になっています。
ドアの開閉と施錠解錠が一つの動作の中に組み込まれていること、そしてそれらの関係性が混同され、ぱっと見ても判らない状態にあることが混乱の要因でしょう。言葉の使い方からも、ドアと鍵(錠)の扱いが混同されていることが滲み出ていますね。
【診断】
ドアを閉めると自動的に鍵がかかることが原因ですので「自動過多」と診断します。
【処方】
では処方です。
現状のダメ出しは、節度を保ちつつできるだけ気付いてもらえるような形態を模索しているとお見受けします。応急処置としては現状以上のものは望めないと考えます。
そこで、根本的な治療を検討しましょう。
処方01:メーカーによる治療
ドアの開閉と施錠解錠を別々の行為に分け、利用者にはそれぞれの動作を自然に受け入れられるよう配慮して以下の様にします。
・スライドドアの開閉はバーハンドルで行う。
・ドアは電動アシストとし、非力な利用者でも使えるようにする。
・施錠解錠は別ボタンとし、文言も「施錠/解錠」とする。また、理解のしやすさに配慮して、アイコンと英語表記を加える。
・施錠を表す色はより標準的な「赤」にする。
・禁煙の表示は既存の注意書きの近くに配置する。
・緊急連絡先は座った時の視界に入る位置に配置する。
ドアは押すかスライドさせるか、バーハンドル自体はどちらの行為も促す形態ですが、殆ど全ての多目的トイレが車椅子を考慮したスライドドアであることから、利用者は経験的に「スライドさせて開ける」と捉えてくれるでしょう。
入室時に「ドアを閉めたあと鍵を締める」ことで、退室時に「ドアは閉めて鍵は開けておく」という状態が無意識的に体現できます。(無意識的、と言いますのは「明確に考えなくても身体がその様に動く」という程の意味です。)
実は、手動のスライドドアと普通の鍵で充分なのです。手動であればわざわざドアの開閉と施錠解錠を一つの行為にまとめることはしないでしょう。しかし自動化するとこうなってしまう。。
「行為をまとめることは便利である」という思考が、それこそ「自動的に」支持されている現状が、今回のような状況を生むことを忘れてはなりません。
ここでは自動化ではなく省力化が本当のポイントなのですね。
ですので自動ドアではなく電動アシストドアがよく、鍵は操作の簡単なボタン(現状)がよい、ということになります。
ちなみにボタンを押すタイプの自動ドアもありますが、その場合は鍵をボタンではなく回すタイプにするなど、「動作を別のものにする」のが良いでしょう。記憶に残る手応えを分けておくことによって混同を避けるのですね。ちょっとしたコツです。
それからロックアイコンの「赤」ですが、現状はそれほど確定的な色は存在しないようです。ですので、今後スタンダードな色が決まってくる可能性がありますが、今回は信号機の止まれが赤であること、影響力のあるiOSのロックアイコンが赤であることから採用しました。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.78
対象:多目的トイレ
設置場所:みなとみらいのショッピングモール
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.9.30
症例:自動過多
ダメ度:××(治療が望ましい)
応急処置:ー
治療方針:外科「分離・移植」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック77【エアコンのリモコン:軽度の表示失調】 ― 2017年09月11日 18:00
みなさま
こんにちは!
昨日の電車の屋根が焼けたのは、線路脇のビル火災の延焼だそうですね。たまたま緊急停止ボタンが押されたタイミングと電車の位置が悪かったとのこと。。
防災システムは訓練された人々の運用に委ねられている事が多いと思いますが、今後はこのような「半自動」の部分は、センサーとAIを取り入れて高度化していくのでしょう。(すでにその過程にあるかもしれませんね。)
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、横浜のミーティングルームに設置されたエアコンのリモコンです。
ダメマシンクリニック77【エアコンのリモコン】
時々利用するミーティングルームのエアコンのリモコンです。出荷時に貼られたと思われるシールが気になりました。
あらためて見てみますと、、
1:誘導表示(画面消灯時の操作)
液晶表示が消えた状態(一定の時間が経過すると消えます)から復旧させるために「ホーム」キーを押す必要があるのですね。
「停止」「快適おまかせ」など、物理的なキーがあるものは、液晶が消えていても操作が可能でした。
物理的なキーがない(そのため表示が必要な)設定項目は「温度」「風量」などがありますが、それらを操作したくなった時に表示が消えている場合のための配慮と伺えます。
確認してみましょう。
これはシールを取り、液晶を消した状態(合成)です。
この状態で「温度の変更」をしたくなったらどこを触りますか?
「風向」を変えるときはどうでしょう?
「お気に入り」「もっと」とはなんでしょう?
・・・
色々疑問を持っていても、どこかのキーを押せば表示が出ますので、結果的になんとなく使えてしまう方が多数と思われます。それでも、戸惑ったまま使えなくなってしまう方がいらっしゃるということですね。
さて、そもそもエアコンのリモコン表示は消えるものなのか、の確認が必要と考えまして、参考までに他社製(2013年)のものを。
こちらも表示が消えるタイプでした。主要な操作に物理的なキーが設けられていること、キーの名称が一般的な名詞の組み合わせであることなどが今回のリモコンとの違いです。
その他にもいくつかサンプルをチェックしました。おおまかな傾向としては「昔は常時表示されていたが、最近のものは一定時間経過後に非表示」のようです。省エネを謳う流れの中で、リモコンにも省エネを求めたのかもしれません。
買い替えなどで、古いタイプ(常時表示)を使っていた方がこの表示が消えたリモコンを手にしたら、ちょっとびっくりするでしょうね。「電池が切れたかな?」と思っても不思議はありません。さらに、温度設定を細かく気になさる方はいちいち表示させるのは煩わしく思うでしょう。
【診断】
新たに使う方に対して必要な、操作に対する情報が不足しています。ただし暫く使うことで慣れると考えられるので「軽度の表示失調」と診断します。
【処方】
では処方です。
このダメ出しは注意喚起としては充分であり、シールなので剥がせることも好ましく思います。したがいまして、応急処置は現状でよいと考えます。
そこで、少ない手数で効果を期待できる治療を検討します。
一つは表示のみの変更で表示失調を軽減する処方、もうひとつは採用しているデバイスの変更による根本治療です。
処方01:メーカーによる治療(表示のみ)
液晶画面が消えている状態のときに、ボタンを押せば表示が出ることを明記します。
・「ホーム」を「メニュー表示」に変更する。
押すと画面が表示されることを明確にするため「○○表示」とします。
また「ホーム」は「メニュー」と置き換えました。「ホーム画面表示」の方が正確だとは思いますが、「メニュー表示」でも意味が通じてシンプルで良いと判断しました。
液晶画面が消えた状態でも発見しやすい「操作部の左上」にありますので、丁寧に文字を追って頂ければ通じる可能性が高いと考えます。
それでも、ぱっと全体を見た時の印象を大きくかえるものではありません。何より「電池が切れている感じ」は残ります。そこで、表示部分を治療する方法を処方します。
処方02:メーカーによる治療(表示デバイスの変更)
省エネ性能を犠牲にせず、常に表示を出すために以下の様にします。
・表示デバイスを液晶から電子ペーパーに変更。
・非操作時も表示は残す。(直前のメニュー項目を表示したままにする。)
・電池が切れた時は、その状態を表示して交換を促す。
電子ペーパーは待機電力を使いませんので、安心して常時表示することができます。
逆に、通電がなくても表示が消えませんので、電池が切れた状態を表現しなければなりません。ただ画面表示を消すだけだと、非操作時に表示が消えるタイプのリモコンにも見えます。そこで以下の様な画面を用意し、電池の寿命が尽きる直前に表示させ、積極的に電池交換を促すのが良いでしょう。
デバイスの変更にともなう開発コストがかかると思いますが、電子ペーパーの特徴である省エネ性と高コントラストによる見やすさは、リモコンにとても向いていると考えます。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 77
対象:エアコンのリモコン
設置場所:横浜 ミーティングルーム
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.9.11
症例:軽度の表示失調
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:表示変更
治療:移植(外科)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック76【カフェのトイレのリモコン:誤選および表示失調】 ― 2017年08月28日 18:11
みなさま
こんばんは!
「しっかり充電します」との宣言通り、仙台、軽井沢、都内各地に参じて、自然や人々の活力を沢山浴びて参りました。デザインの仕事もしっかりさせて頂いたので、とても長い夏に感じましたです。もう気分はすっかり秋です(笑)
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、軽井沢のカフェで入ったトイレのリモコンです。
ダメマシンクリニック76【カフェのトイレのリモコン】
旧軽井沢のとてもオシャレな一軒家のカフェで、設えの全てに目が行き届き、トイレ内にもアートがちりばめられていました。しかし、リモコンには唯一のダメ出しが。
詳しく診るまでもありませんけれど、、
1:表示(上面の便器洗浄ボタン)
正面から見えない上面の便器洗浄ボタンの位置を示しています。
なお、リモコンの下部に「オート洗浄」とありますが、このトイレはオートではありませんでした。(表示もオフになっています。)
この「洗浄ボタンが上面」タイプのリモコンはあちらこちらでダメだしされているのを見かけます。そのほとんどが、家庭用と思われるこのタイプのリモコンを店舗に設置していることが原因です。家庭内では「慣れ」が期待できますが、不特定多数が使う場合は初めてでもすぐ使えるよう、ぱっと見た判りやすさが重要なのですね。
このタイプのリモコンは、これまでも取り上げていますので、ご興味のある方は以下もご参照くださいませ。
ダメマシンクリニック03【カフェのトイレ:優先順位障害】ダメマシンクリニック04【カフェのトイレ:高機能化症候群および自社中毒の疑い】
ダメマシンクリニック64【そば屋のトイレのリモコン:誤選および表示失調】
【診断】
公共の使用に適した設備が必要があったとして「誤選」と診断します。
また、誤選により設置されたリモコンの「表示失調」を併記します。
【処方】
では処方です。
こちらのダメ出しは最小限で、味のある手描きのデザインからは店主の工夫と愛着を感じます。機能的にもしっかりと目に留まりますので、このままでよいでしょう。
また、施設の見直し時には適切なリモコンの置き換えを検討してもよいでしょう。
さて、ここからは余談です。
上に「適切なリモコン」と書きましたが、そもそもメーカーに店舗用のリモコンは用意されているのでしょうか?「公共用」とうたいますと、以下の様なものを想像します。
参考:駅構内の多目的トイレ
これはちょっと物々しいと言いますか、個人店にはそぐわない印象ですね。
なんと、JIS規格もあるとのことなので確認してみましょう。
ペーパーホルダーの上に、大きく洗浄ボタンがあるのが好ましいとの結論。ありふれた解答ではありますが、開かれた場所では必要な見識なのでしょう。
そして、カタログにあるユニバーサルデザインのリモコンが、このカフェに似あうかどうかは店主の判断にお任せするとしまして、カフェのような「開かれたプライベート」を意識したデザインはもっとあってもいいと思います。ご参考までに。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 76
対象:カフェのトイレのリモコン
設置場所:軽井沢のカフェ
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.8.28
症例:誤選および表示失調
ダメ度:×(治療が望ましい)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「再配置」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック75【コンビニの新コーヒーマシン:多重コミュニケーション不全】 ― 2017年07月14日 10:00
みなさま
おはようございます!
みなさまこの夏はどちらかへ行かれますか?
私は知人からモンゴル旅行に行ってきたお話を伺いまして、旅情が募っております。。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、厚木のコンビニで見かけた新型のコーヒーマシンです。
ダメマシンクリニック75【コンビニの新コーヒーマシン】
新商品のカフェラテ(正しくは製造方法の違う商品からの切り替え)の登場にともなって新設されたマシンですね。
旧型は以前から各地で多くのダメ出しを受けてきたマシンです。注目を浴び、大量の指摘を受けてきたからには、、と思いましたが、登場早々にダメ出しされていますね。
詳しく診ていきましょう。
1:注意書(ボタンの押し間違いによる返金交換は出来ないこと)
2:誘導(カフェラテは左側へ)
3:表示(カフェラテ)
4:注意喚起(カップの置き間違い)
5:表示(コーヒー)
新型マシンは、カフェラテ用の抽出システムとコーヒー用のシステムを並べた構造になっています。従来のデザインを横に並べ、文字とボタンの色の差で誘導するようになっています。従来のマシンは設置から年月が経ち、利用者が学習したことによってダメ出しのないマシンも見かけるようになっていました。しかし、もともと誤操作を誘発しやすいデザインでしたから、並べた事によって複雑さ、間違えやすさが再び表面化したといえるでしょう。うーん、、残念。
ここでコンビニコーヒーを利用されない方に簡単なご説明を。
まず、レジで飲みたいもの(コーヒー・アイスコーヒー・カフェラテ・アイスラテ)のカップを購入ます。
次に、自分でマシンにカップをセットし、購入した飲み物のボタンを押します。
飲み物の抽出が終わったらカップをとり出し、砂糖やミルクなどお好みのものを入れて出来上がり、です。
ここで問題なのは、利用者が「購入」と「マシン操作」の二度にわたり、意思決定と伝達を行わなければならない、という煩わしさです。「ものを買う」という流れ(行為)の中で、精算した後にもう一度商品を指定する、というのは心理的な二度手間となります。極端な言い方をしますと「お金を払い終わっているのに正しい商品が受け取れる保証がない状態」なのです。大分見慣れましたけれど、他にはあまりないシステムなのですね。(似たような「食券」の方式では、通常は購入した食品が出てきます。また、悪知恵が働く人はここを悪用している事でしょう。)
無自覚でも心理的ストレスがかかっていると誤操作しやすいものです。その上、小さな文字をしっかりと読む必要がある、、。ケアレスミスが起きやすいのは当然と言えるでしょう。
【診断】
従来マシンの「コミュニケーション不全」が治癒されないまま、新たな操作系が加わった事により混乱を招いていますので「多重コミュニケーション不全」と診断とます。
【処方】
では、処方です。
応急処置では「2つのマシンが並んでいること」「カフェラテは新しいマシンで出す必要がある事」を強調します。
メーカーによる治療では、意思決定を購入時の一回で済ます方法を処方します。
処方01:応急処置
応急処置では、以下の様にするのがよいでしょう。
・左右がそれぞれ独立したシステムであることを明確にする。(ラインをいれる。)
・イラストを用いた大きな誘導表示をする。
・誘導は利用者との接点である「カップ」「ボタン」のそれぞれの近いところで行う。
人は「文字」より「絵」を先に見るようにできています。そして、文字は「読む」行為が必要ですが、絵には要りません。ですので、対象が具体的なものであればイラストやピクトグラムがあれば「一目瞭然」となるのですね。
ここに使ったイラストは、みんな大好き「いらすとや」さんのものです。フリー素材なら絵が苦手という方にも積極的に使っていけるでしょう。
この処方は、、
従来マシンは利用できる利用者さんが対象で、
カフェラテかコーヒーかを明確に分けることが主目的、です。
従来マシン、といいますか、従来のシステムの治療はされていません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下2015.11.20付
【オペレーション全体から操作系をデザイン】
そこで、以下の様なオペレーションを考えて見ます。
・意思決定は一度で済ます。(購入の際の一度)
・操作は単純化する。
マシンはボタン一つです。
自動で購入したメニューがドリップされます。
ホットの小が作られているところです。
上部の液晶(現在ほとんど認識されている様子が伺えていませんが、せっかくなので活用します)に「購入したメニュー」を表示させます。
ボタンは「操作を受け付けたこと」と「正しく動作していること」を示すために、メニューに合わせた色のイルミネーションを付けます。
このオペレーションでは「購入商品が何かをマシンに伝える仕組み」が必用です。
例えば、、
・購入したカップにタグがあり、それをマシンがセンシングしてメニューを判断。
・さらに、レジから「購入済」と「メニュー」の情報が連動する。
このオペレーションでは、意思決定は一度(商品を選びや金を支払うまで)であり、あとは唯一の操作を実行(カップをセットしてドリップボタンを押す)すればよい、となります。
また、このシステムでは以下の効果も期待出来ます。
・故意の誤操作(Rを購入してLを押すなど)や未購入での操作を防ぐ。
・メニューが増えてもシステムのソフトウエアだけで対応が可能。
なお、既存のシステムが、、
・専用マシンであること。
・蓋と連動したセンサーが働いていること。
・レジを含めて比較的早い周期で装置が刷新されること。
などから、この案は十分に実現可能なのでは、、と考えます。
(引用終わり)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
上記内の「購入商品が何かをマシンに伝える仕組み」は、最近のレジなら「レシートにコードをプリント」でもよさそうですね。システムの更新頻度も高く店舗数が多いことを考えれば十分現実的だと考えます。
念のため店舗数を見ておきましょう。
国内で2万弱、海外店舗をいれると6万強。
コーヒーマシンだけでなく、様々なローカルカルチャーに合わせて、農産物の供給と消費をシステムにするくらいのインパクトが出せる規模感でした。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 75
対象:コンビニの新コーヒーマシン
設置場所:厚木セブンイレブン
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.7.14
症例:多重コミュニケーション不全
ダメ度:××××(マシン単体では処置し切れない)
応急処置:表示追加修正
治療方針:外科「センサー追加/操作系再考/表示系再考」
内科「システム連携」
皮膚科「表示計画再考」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック74【イコカのチャージマシン:表示失調および軽度の誤形】 ― 2017年06月25日 15:00
みなさま
こんばんは!
金曜日に更新の予定でしたが所用があって今日になってしまいました。楽しみにして下さっていた方にお詫び申し上げます。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、大阪のJRの駅で見かけたイコカのチャージマシンです。
ダメマシンクリニック74【イコカのチャージマシン】
JR京橋駅の改札前に設置してあるイコカのチャージマシン、以前から気になっておりました。いつも足早に通り過ぎてしまうのですが、今回初めて立ち止まって拝見しました。
1:表示(使用可能カード)
2:誘導(カード)
3:表示(カード挿入口)
4:注意書(つり札)
5:注意書(紙幣の入れ方)
6:注意書(旧札の使用不可)
1の表示は、下のLEDに干渉していることから後から追加されたものと推察します。
他はカードの扱い方(2〜3)と紙幣に関する注意書(4〜6)に2分されますね。
このチャージマシンは経年を感じさせる外装、押しボタン式のインターフェイス、「旧札」の表示から、イコカの導入と同時期または数年以内に設置されたものと推察します。イコカは2003年、新札は2004年とのことですので、2004〜5年頃のものでしょうかね。
そして、この頃の機器やサービスを思い起こせば、ダメ出しの背景が見えてきます。一つづつ見て行きましょう。
まず自動販売機とATMです。
当時、高額紙幣が扱える自動販売機では珍しかったはずです。紙幣が使えても千円札のみで、硬貨しか使えない自販機もまだまだ現役でした。
銀行のATMでは高額紙幣が扱えましたが、札束を一度に扱える(紙幣投入口が大きく開く)タイプが、店舗内の少し狭まった場所に設置されているのが普通でした。
また、コンビニATMも普及していましたが、設置場所には今見かけるものよりも慎重な設置基準でしたよね。(一番奥にあったり、壁が設けてあったり、など。)
つまり、この頃(2004〜5年頃)は、このチャージマシンのようなオープンな環境で高額紙幣を扱う自動機器を扱うことは希でした。
例えば一万円札しか持っていない利用者が「2,000円だけチャージしたい」という時、「このマシンはおつりを出すことが出来るのか?」と疑問に思っても不思議ではなかったのですね。
そして、複数の紙幣を挿入するという行為も他にはありませんでした。
したがって、紙幣に関する注意書は、設置当時においてはとても有用だったと推察できます。
次に「カード」の扱い方です。
非接触カードの普及期ではありますが、プロトタイプの実験も良好で「タッチ」という動作イメージは充分に周知されていました。しかし、交通系の電子マネーは「おサイフケータイ」とともに2004年頃からありましたが、それを利用できるのは一部の売店やコンビニに限られていました。(ちなみに、バスには2007年頃から普及していきます。このころから、「電車に乗る」以外の利用が普及していったようです。)
したがって、この頃の「タッチ」は「改札を通る時」の特別な行為で、カードの「非接触性」が充分理解されているとは言えませんでした。
ここで、このマシンを見てみますと、カードは「立て掛ける」ようになっています。突出させた円形の台に赤い矢印で誘導しているデザインからは、「非接触の特徴を示す新しい体験を提供する」という意気込みが感じられます。
しかし、「立て掛ける」という行為は他に例がなく、どのように振る舞うべきか、迷う利用者さんは少なくなかったことでしょう。「挿入口」という表示からは、「立て掛ける」より「入れる」方が、「カードにふさわしい行為」という認識があったことが伺えます。
【診断】
高額紙幣とつり札の扱いおよび非接触カードの扱いにおいて、利用者の認識とのズレがあったことが根本原因です。症状としては、紙幣に関しては「表示失調」と診断します。
カードについては、誘導したい行為(センサーの近くにカードを静止させる)と形状のシグニフィア(行為を誘発する形状のこと。アフォーダンスとも。)にややズレがありましたので「軽度の誤形」と診断します。
【処方】
では、処方です。
一般に、誤形に伴うシグニフィアの間違いは、表示で解決することが殆ど出来ません。それは、「人は形態や状態の情報を優先する」からです。ですので根本的にはカードを置かせる形を直す必要があるでしょう。
しかし、経年による「利用者の認識の変化」を考慮しますと、「利用者がここにカードを置く」ことはある程度一般化されたと考えてもよいでしょう。(これはこのマシンのダメ出しによる周知ではなく、非接触カードを利用する場面が多様化したためです。)
従いまして、応急処置は現状の追加表示のままとします。
今回は、「新しい方法(ここではカードの置かせ方)が受け入れられるようにするにはどうしたらよいか」という重要なポイントがありますので、当時の環境にさかのぼって可能であった治療を処方したいと思います。
処方01:応急処置
現状の追加表示のまま。
ただし設備刷新時に同等のマシンが設置された場合は、表示は最小限にとどめる。
処方02:メーカーによる治療(センサー部のみ)
当時(2004〜5年頃)の環境を考慮して、以下の様にします。
・センサーは水平にして、物を置かせる形(受け皿)とする。
・正面からみえる位置に誘導を表示する。
・「ここに置く」と文字で明快に行為を指示する。
この形は「置くこと」が明快です。誘導する行為が明確であれば、そこに戸惑いは生まれにくいものです。
ただし、「台に置くことが自然」だったとは言えません。この行為もまた「他に例のない行為」でした。「立て掛ける」も「置く」も、どちらも不自然ではありました。
しかし、普及に伴って自然になっていくのはどちらか、という観点で見れば「置く」方が優位であることは、当時関わった方なら言えるのではないでしょうか。
なお、既に普及していた「おサイフケータイ」を考慮して図に加えていますが、設置のタイミングによっては不可だったかもしれません。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 74
対象:イコカのチャージマシン
設置場所:JR京橋駅 改札外
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.6.25
症例:表示失調および軽度の誤形
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:追加表示
治療:整形(外科)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック72【トイレのサイン:誤選による表示失調】 ― 2017年06月09日 19:30
みなさま
こんばんは!
横浜は梅雨のはしりの湿気た風が、港の方から気持ちよく吹いております。ちょっと汐の匂いがまざって、地元なのに旅情を誘うのですよね。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、レストランで入ったトイレのサインです。
ダメマシンクリニック72【トイレのサイン】
トイレのサインほど、広く普及して認知されているものはないと思うのですが、それでもダメだしされてしまうことがアルのですね。診て行きましょう。
1:追加のサイン(トイレマーク)
既存のもののすぐ上に、別デザインのものが表示されています。
既存のものは凝ったデザインではありますが、判らないと言う程でもないような気もします。どういうことでしょうか・・。
トイレの位置関係を確認しますと、細長い廊下の突き当たりが女子トイレ、途中の左側が男子トイレとなっています。廊下の入り口からですと、女子トイレは遠く、男子トイレは角度がきつく、どちらも見やすいとはいえない状況です。また両方のサインを見比べるのは難しいでしょう。この状況では、色や明快な形のないサインでは、識別性がぐっと落ちてしまいます。(女子トイレの写真がなくてすみません、自粛しました。)
もう少し詳しくお話しますと、男女のサインが並んでいたら、デザインの差が見えやすくなります。もともとのデザインでも、並んでいたら見分けがつくと感じました。
しかしここでは、どちらか1ヶ所を遠目から見て、ぱっと「男子(女子)トイレだ」とわかる必要があります。見比べなくても識別できるようにするには、広く認知されている「色(赤系と青系)」「形(単純化された人型)」が必要なのですね。
【診断】
設置環境にあわないデザインが選定されたことによりサインの機能が充分に発揮されていませんので「誤選による表示失調」と診断します。
【処方】
では、処方です。
応急処置でかまいませんので、サインを貼り替えましょう。
処方01:応急処置
応急処置(表示貼り替え)は現状のもので機能していますが、以下の様にすると良いでしょう。
・遠目から見える色と形のサインを選定し、既存のものと差し替える。
もともとのデザインは、レストランの雰囲気を演出する意図があったと推察します。ですので、少しでも雰囲気を壊す要素は除きたいところです。
従いまして、貼り替える方がスッキリと収まって良いでしょう。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.73
対象:レストランのトイレのサイン
設置場所:横浜市
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.6.9
症例:誤選による表示失調
ダメ度:×(応急処置で対応可能)
応急処置:表示貼り替え
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック71【駐車場の発券機:表示失調】 ― 2017年05月12日 17:30
みなさまこんばんは!
今日は暑かったですね!
日が暮れてきましたら「もう梅雨かな?」と思わせる湿った風が吹いて参りました。季節が行きつ戻りつしながら、夏のエネルギーを溜めているような感じが漂っております。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、駐車場の入場ゲートにある発券機です。
ダメマシンクリニック71【駐車場の発券機】
1:表示と誘導(発券ボタン)
2:告知と誘導(定期券挿入口の故障)
3:表示(係員呼び出し)
1の発券ボタンは赤く「発券」と光るものでした(昨年は光っていました)が故障しており、表示もかすれております。少々見づらい状態ではありますが、発券ボタンの存在に気付かない利用者さんは極く少数と思います。ゲートが開かなければ「発券ボタンを押す」と理解するのは簡単ですもの。
しかし少数であっても、声の大きい方が強く主張された場合、何かしらの対応をしたくなるのも充分に想像が出来ます。
係員呼び出しボタン(3)も、もともとは控え目(意図的に目立たせない)でしたが、発券ボタンの表示を入れるとなれば、ここにも追加したくなるのは不思議なことではありません。
2の「定期券が駐車券発行口に挿入できる」はアナウンスがないとまったく判りません。従いまして直るまでの期間限定としましても、こちらの方が重要なと言えます。
【診断】
ボタンの「発券」の表示が見にくいことから軽微な「表示失調」と診断します。
【処方】
では、処方です。
発券ボタンは誘導(文章)ではなく位置を明確に表示し、定期券の誘導を大きく表示します。
処方01:応急処置
応急処置(追加表示)は以下の様にするのがよいでしょう。
・追加の誘導表示(1)を消す。
・もともとあるイラストを隠すように「発券ボタン」を表示。
・定期券の告知と誘導は大きくし、既存の情報を全て隠す。
かすれた「券発行」のイラスト(ボタンの位置を表す機能も担っていた)を上書きします。この位置に明瞭な表示があれば(文字を読まなくても)ボタンの位置を示唆することが出来ます。
定期券のイラストを隠すのは、ノイズを少しでも減らすための措置です。定期券の利用者の殆どはここに定期券挿入口があることを知っています。その位置に大きく告知を書くことで、遠方から見ても「いつもと違う」という状況が伝わりやすくなります。
ダメ出しの追加表示は、水平垂直に気を使って入れる方が望ましいです。「正しさに気を使っている印象」の方が安心感があります。
ところで、駐車券発行口が定期券挿入口を兼ねるのはここだけの特別な措置なのでしょうか。この場所の不具合の放置のされ方からすると、故障や誤挿入を想定したもともとの仕様(冗長性)にも見えますね。もしそうなら、素晴らしい配慮だと思います。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 71
対象:駐車場の発券機
設置場所:横浜市港湾部のホームセンター屋上の駐車場
報告者:ディーエムシー
報告日:2017.5.12
症例:表示失調
ダメ度:×(表示対応可)
応急処置:表示修正
治療方針:皮膚科「表示修正」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
ダメマシンクリニック70【エレベーターのボタン:経年変化による誤形および干渉障害】 ― 2017年04月28日 10:10
みなさまおはようございます!
明日からゴールデンウイークが始まりますね。近年は浮かれ気分の人ごみに混ざって、観光地を歩くのも面白いと思うようになりました。気が向いたら都会へ出てみようかな、、なんて思っております。
さて、今週のダメマシンクリニックはC.S.さんからご投稿頂きました、エレベーターのボタンです。
Cさん、ありがとうございます!
ダメマシンクリニック70【エレベーターのボタン】
投稿内容はこちら(写真とも)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんにちは。いつも楽しく拝見しています。
今日はエレベーターのボタンについて投稿します。
東戸塚某オフィスビルのものです。
エントランスのエレベータ呼出ボタンは
タッチセンサーです。
が、多くの人が押しこんで壊してる模様。
さらに、エレベータ内のボタンは
階表示はタッチセンサーですが
開閉ボタンは押すのです。
デザインが似ているのでよく迷います。
処方よろしくおねがいします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このボタン、どこかで使ったことがありそうなデザインです。パネルやボタンの細部が、30年くらい昔のものかもしれないと思わせます。(ざっとした画像検索では、出自の詳細は判りませんでした。)
早速、詳しく見て行きましょう。
エントランスホールのボタン
1:表示と注意書(タッチセンサー・素手での操作が必要)
「!」をつけて強調されています。文面からは手袋をしたままグリグリと押すくらいイライラする利用者さんが想起されます。
ちなみに、ここでは「タッチパネル」と書かれていますね。間違いではありませんが、パネルとは「盤(操作盤)」のことですので、より正しくは「タッチセンサー」の方が良いでしょう。念のためここからは「タッチセンサー」とします。
カーゴ内のボタン
扉の開閉は押しボタン、階指定はタッチセンサーとなっています。
「同じような外観でありながら振る舞いが異なるものの混在」が原因なのは明らかですね。「押す」と「触る」では手のアプローチも指の力の掛け具合も大きく異なります。押せると思ったボタンが押せないと、場合によっては突き指してしまうくらいですもの。(私の周囲だけでも複数の実例がありました。)
原因は明快ですが、何故この様なデザインとなってしまったのか、、疑問が残ります。
ちょっとお話が飛びますが、ここで「押しボタン操作」の変遷について思いを巡らせてみましょう。
機械式の操作盤は、回転(ハンドル、スクリュー等)と移動(レバー、スライダ、ボタン、キー等)の物理的な変化を装置に与えるものが並びます。古くからある装置の中で、押しボタンに近いものとしてはピアノやオルガンの鍵盤があります。後にタイプライターが登場しましたが、これらの操作イメージは「叩く」です。
日本の家庭に普及した装置では、ガス式の炊飯器の短いレバーを押し下げるものが押しボタンに近いでしょうか。商店ではレジスターもありましたね。機械式の「ボタン」は実際には短いレバーでしたから、いずれも指でしっかりと力を伝える必要のあるものです。この操作イメージは「押し込む」です。これらの作法が、電機式の装置にも引き継がれていきます。
一方、エレベーター自体は紀元前からあるそうで、電動のエレベーターは19世紀からあったそうです。20世紀になって普及したものの操作にはレバーやボタンなどが使われていました。ただし長い間、利用者自ら使う機会は少なく、運転手が操作していました。(エレベーターガール、いらっしゃいましたよね。)
一般的に「エレベーターのボタンを押す」という経験は、日本では70年代からのマンションブームでしょう。都市部のマンションに住まう一部の方々には「押しボタン」が身近になっていきました。この頃のボタンは機械式のボタン同様「しっかり押す」イメージです。
70年代はまた、掃除機、洗濯機、扇風機、ステレオなどなど、多機能化が進んだ家電製品の買い替えが加速し、家庭内で(レバーや回転式のスイッチにかわり)押しボタンが身近になりました。操作イメージはここでも「しっかり押す」イメージでした。
80年代に入り「プッシュホン」と「リモコン」が一般化します。電話とテレビの普及率は高く、地域の偏りもなく、年齢層にも関係なく使われました。前後して電卓がオフィスに、次いで家庭内に普及します。いずれも数ミリのストロークで、電子機器を操作するものです。他の家電製品にもこのタイプ(小さいストローク)の押しボタンは広く隅々まで普及しました。「ちょっと押す」という操作イメージが確固たるものになりました。
80年代はまた「タッチパネル」が普及を始めた時代でもありました。郵便局や銀行等のATM、最先端であったカーナビを筆頭に、ブラウン管(後に液晶)に透明電極や感圧センサーを被せたものが普及しました。この頃の操作イメージは当時の他の押しボタン同様「ちょっと押す」でした。「このボタンでいいかしら?」等とボタンに指を置いた状態で思案するのが普通でしたから、鈍感な方が都合良かったのです。
「タッチパネル」は静電式のiPhone(2007)が登場するまで感圧式が標準でした。80年代から2008頃までの四半世紀の間、電子機器の押しボタンは「ちょっと押す」がスタンダードだったのです。
日本でスマートフォンがブレイクしたのは2012年、それよりも前にiPhoneやiPadが身近になっていたこともあり、これ以降急激に「触る操作」のイメージが一般化します。数年前から炊飯器や冷蔵庫などの家電のUIにも採用が増えています。これは「触って操作する」が普通になったことを表しています。
さて、今回のボタンに話を戻しましょう。
このボタンの(源流の)登場時期は、早くてマンションブームの70年代、遅くともタッチパネルが普及する80年代にはあったと拝されます。しかもそれは「押しボタンそっくりのタッチセンサー」という、今回の根本原因から読み解けるのですね。
まず、上で見てきましたように、押しボタンの「押す距離」や「必要とする力」は、一貫して小さくなっていきました。ですから、押しボタンがまだ「しっかり押す/ちょっと押す」ものであったころは、比較的に軽く押せるボタンに価値があると見なされました。静電式のボタンを使う意味(先進性、高級感など)があった、ということですね。
次に、「しっかり押す/ちょっと押す」が普通の頃のボタンは、当然「押す形」をしていました。世の中にはまだ「触る」操作を誘発する形がなかったのですから、タッチセンサーに触ってもらうためには「押しボタン」の姿をする必要があったのです。
利用者を含め「軽く押す」ボタンという認識であれば、押しボタンの形をしていても問題にはなりません。違和感に気付いた人がいたとしても少数意見に留まり、それよりも「先進性を感じる」「かっこいい」「高級感がある」という評価が勝ったのでは、、と拝します。
そしてこの推察がもっとも当てはまるのは80年代前後(昭和の終わりから平成にかけて)でしょうか。
そして、その頃の日本のものなら少々の力では壊れません。もともと公共のものですので安全率を大きくとっている上、操作イメージである「押し込む」に耐えられるように設計しているはずですから。
もし、ここのボタン壊れたのなら通常経年劣化、または悪意による破壊の可能性が高いと言えるでしょう。
【診断】
時代を経て、操作にかかわる形態そのものが誤りになってしまいましたので「経年変化による誤形」と診断します。
また、形態のアフォーダンス(シグニフィア:押す)と、操作(触る)が干渉していますので「干渉障害」を併記します。
【処方】
では、処方です。
誤形に伴うアフォーダンス(シグニフィア)の間違いは、表示で解決することが殆ど出来ません。それは、「人は形態や状態の情報を優先する」からです。(参照記事)
したがって、根本的な治療は使用性の高い「押しボタン」に統一することです。
そこで、根本治療が出来る(設備のアップデート)まで、利用者の習熟パターンを考慮した追加表示での応急処置を処方します。
処方01:応急処置(追加表示)
追加表示を以下の様にします。
・基本である「操作部のすぐ上」に小さく表示。
・説明、注意書などの大書はしない。
このボタンは初見のユーザーが最初に触れるインターフェイスですから、これがタッチセンサーであることが伝わることが大切です。現代はタッチセンサーが、どの様な使い方をしなければならないかまでを含めて一般化していますから、どの様に使うべきかもわかるでしょう。ですので注意書きも不要と判断します。
なお、カーゴ内のボタンも全て(開閉ボタンも含めて)タッチ式という誤認の可能性が出てきます。しかし、開閉ボタンは階指定ボタンより優先順位が低い(階指定が出来ないと目的の操作ができないが、開閉ボタンは省略できるため)こと、現状でもカーゴ内のダメ出しの必要がないこと、逆の誤認(タッチセンサーを押しボタンと思うこと)より危険性が少ないことから、表示はここだけに留めておきましょう。
ところで、押しボタンの操作イメージはただ「押す」だけではありますが、「力と量」は利用者さんにより大きく異なります。
特に「しっかり押し込む」イメージをもった利用者さんにとって、「ちょっと押す」ボタンは壊れやすいものになってしまいます。
今の技術、今の操作イメージだけでなく、その機器を触る方々がもってらっしゃる操作イメージを設計に反映して頂ければと思います。
壊されやすい「ちょっと押す」ボタン。(以前の記事)
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 70
対象:エレベーターのボタン
設置場所:横浜市内 オフィスビルのエントランス
報告者:C.S.
報告日:2017.4.17
症例:経年変化による誤形および干渉障害
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:整形(外科)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ダメマシン」でお困りの方へ
https://www.facebook.com/damemachine
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい!
・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
最近のコメント