デザインの対立軸を俯瞰しよう2010年07月08日 23:59

デザインに関する議論の中でよく耳にする対立軸があります。
実際の現場でも問題になる事がありますので、思い出すままに挙げて見ましょう。

アート × デザイン
アート × サイエンス
スタイル × 機能
コスト × 品質
・・・

アカデミックな整合性はともかく、もっと様々に、例えば「営業×企画」なんていうのもありますね。

どの対立軸もそれぞれの事情がありますが、理想と現実という意味合いで、一方を優先すれば一方を妥協する状況が起こりえます。

しかし、デザインの本質(の少なくとも一部)が問題解決とするならば、それぞれの対立軸で妥協ではない両立を探ることこそ、デザインの役割かもしれません。
その場合「×」は「バーサス」ではなく、文字通り「掛ける」になりますね。

対立を感じたらそれを俯瞰していくこと。
そのスタンスが大切なのでしょう。

よく考えられている事2010年07月09日 23:59

昨日は、対立する価値観を妥協ではなく両立させることがデザインの本質的な役割なのでは、、と書きました。
本質論的には、まったくその通りだと思っているのですが、実際の現場感覚では、それらに加えて絶対に忘れてはならないことがあります。お金と時間です。これらも含めて解決を図ることが大切です。

企業活動において、あるレベルで妥協するか、妥協をせず徹底して全ての課題をクリアするか、は「時間の問題」であり「予算の問題」です。製品発売のタイミングとかかる開発費に直結するからですね。
つまり、企業活動におけるデザインの品質は、かけられる開発費に左右されやすい、ということになりそうですが、実態は大きく違います。
時間の掛け方、予算の掛け方で検証出来る仮説の量が大きく変わりますし、意思決定の仕組みによってスピードが大きく変わるからです。
同じ予算と時間でも、知恵を絞って沢山の仮説を素早く検証する。これは品質向上を促すと言っていいのではないでしょうか。

この「全ての要因がよく考えられて導かれた知恵」、予算配分と意思決定方法と言う通常ではデザイン(部署)の外側の要因までを含んだ解決を、デザインと呼ぶべきかもしれませんね。

徹底的に使う人とほとんど使わない人2010年07月12日 20:26

一つのものをデザインする時、徹底的にターゲットイメージを鮮明にしてそこへ向けてデザインする、というアプローチがあります。
プロダクトでも広く効果を発揮しますし、大勢が判断基準を共有するためにも使い勝手がいいです。

ただ、この方法論は人が変化することを一般的には想定していません。
例えば初めて買うエントリーモデルと、もの足りなくなって買う高スペックモデルは、「見かけ上別々のターゲット」と捉える発想で作られています。しかし実際は一人のユーザーが時間差で買う、というのはよくあります。ユーザーが変化すると、別のターゲットになってしまうのです。
細分化した方が市場が盛況になりますので、判っていてあえて無視していると言う方が正確かもしれませんね。

また、この実際には好みも習熟度も興味の深さも「変化する一人のユーザー」をターゲットとして捉えたデザインもあります。

このアプローチでとても有効な方法を一つご紹介します。それは「徹底的に使う人」と「ほとんど使わない人」の両方のユーザーを知る事です。
この両者の対比には、習熟度、生活内での位置づけ、価値観、ライフスタイル等の、時間に伴う変化をひもとくヒントが沢山あるのです。

一つの商品を長時間使用する市場ではとても大切な観点です。例えば、最近注目を集めているBOP市場にはとても有効でしょう。

UIが拓く2010年07月13日 23:59

今日、お客様に教えて頂いた2歳の子供がiPadを使いこなしているムービーです。
検索してみますと、このムービー以外にも沢山の小さな子供達がiPadを扱う姿が見られます。



以前にもお伝えしましたが、20年ほど前は幼児(3〜5歳)にマウスを使うGUIを与えても何も反応がありませんでした。
また、使って見せても画面の中の変化(ボタンの点滅等)に反応する事もありませんでした。
一方、上のムービーに見られるように、現在は幼児でもタッチインターフェイスなら使えてしまいます。凄いですね!
またこれは推測ですが、子供は親などの周囲の年長者の姿を見て模倣するのですから、すでに周囲の大人が日常で使用している事も大きなメッセージになっている事でしょう。(このムービーの少女は使い方を教わっていると思いますけれど)

また、数日前にみなとみらいのコーヒーラウンジで、60歳を大きく超えていると拝されるご婦人方が、iPadを覗き込みながらレストランの検討をしていました。
極自然な光景として風景に馴染んでいましたが、やはり凄いことですね!
UIとはこう言う事なのです。

Panasonicの製氷皿2010年07月14日 14:54

8年間使用した仕事場の冷蔵庫が壊れたので、Panasonicブランドの2ドア(NR-B142)に買替えました。偶然にも、使用していたNational製2ドアの後継にあたるもののようです。

サイズやレイアウトはほぼ同等なので大きな差はありませんが、棚がガラスになったり、最下段が引き出しになったり、卵ホルダーが廃止になったりと、使い勝手の細い工夫があります。特に印象的なのは「製氷皿」です。

一見したところ普通のものですが、細い所が工夫されています。

まず、氷庫の上に皿を吊る置き方。
製氷皿 Panasonic
こうすると必ず平らになり、冷気も均等に当ります。また直置きではこぼれた水が凍って貼付いたりしますが、その心配もありません。

次に製氷皿の素材と形。
製氷皿 Panasonic
少し判りにくいのですが、水が玉になっている様に、従来のものより格段に撥水性のある素材(または表面処理?)と角のない形状で、氷が剥がれやすくなっています。
さらに、縁の高さを水面から余裕たっぷりにとっているため、持ち運びの際に水をこぼす心配がほとんどありません。
私はこの「こぼしそうな所を気を付けて運び入れる」が大嫌いだったので、この工夫は本当にありがたいです。

自動製氷が主流の中で、そのフィードバックを活かしながらとてもよく研究されているなぁ、と嬉しくなりました。
こういう仕事をして行きたいですね。
dmc.
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